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骨粗しょう症の治療をやめてしまった人へ

治療のモチベーション

こんな方がいらっしゃいました。65歳の女性でやせ型です。「私は酒もタバコもやりませんし、少しやせていると思いますが、よく歩くほうだし、乳製品も小魚もよく食べます。まさかこんなに骨密度が低いとは思いませんでした。」と言って示された数値は対若年者比(YAM)70%でした。70%は「薬物」治療の対象です。女性の言う通り、生活面はかなり気を遣っているのですが、よくお話を聞くとお母様が大腿骨の骨折歴があるそうです。また閉経が40歳代で少し早かった、ということです。このような場合、やはりリスクが高いですので、生活面をこれ以上改善させてもなかなか自力で骨密度を上げていくのは難しいと考えるべきでしょう。患者様には現状と今後起こりうる骨折の危険性を説明して、薬物治療を提案しました。健康そのものという感じであまり薬を飲んだこともない、という方でしたので薬物治療については抵抗感がありましたが、最終的には合意してくださいました。6か月後、骨密度を測定しましたが、全く良くならず、むしろやや低下していました。どうしたことかと伺ってみますと、薬をしっかりと飲んでなかったということがわかりました。服薬率が低く、治療がうまくいってなかったのです。

このケースの場合、治療に対するモチベーションが上がらなかった、ということが一番の問題点でした。骨粗鬆症は骨折が起こらない限り、無症状です。人間だれしも、無症状だとなかなか治療の「やる気」が出てこないものです。この女性の心理状態も十分に理解可能です。

治療の「やる気」が起きない原因

 治療に対する意欲が起きないとなかなか服薬に結びつかず、飲み忘れや中断、ということになりやすくなります。骨粗鬆症の治療をはじめて1年後、処方通りに飲めていない患者が30~50%という報告もあります。服薬が続かない要因、治療のモチベーションが下がる要因はいくつか指摘されています。

 ・治療への理解が乏しい(治療しなくても何とかなるのではないか)

 ・費用(他の薬を複数内服している、骨粗鬆症の薬は後回しでいいかな)

 ・薬物への不信感

ビスホスホネート製剤(代表的な骨粗鬆症治療薬、後述)に特徴的な要因

 ・胃腸障害(薬を飲んだ後気持ち悪くなる。)

 ・服薬方法が面倒(起床時、コップ1杯の水とともに、内服後横にならない)

 

治療の「やる気」を上げるため

 治療のやる気を上げる要因もいくつか指摘されています。

  ・定期的な骨密度、骨代謝マーカーの測定

  ・医療者からの積極的な働きかけ、声掛け

  ・定期的な運動習慣

  ・家族に骨粗鬆症がいる

  ・骨折している・すでに骨折していた

  ・早期閉経、ステロイド服用者などでリスクを理解している人

  ・内服から注射へ変更

 漫然と治療するのではなく、定期的に骨密度や血液検査を行って、治療の目標に近づいているのか、治療でよくなっているのか確認することは大事なことです。患者様に骨粗鬆症を理解してもらうこと、治療の必要性をわかってもらうことも大事ですので、私たちも継続的に治療の必要性をお話ししたいと思います。

患者様からも治療で生じる様々な疑問や問題はできるだけ私たちへお話しいただければと思います。例えば、内服が面倒だとか、飲んだ後気持ち悪い、などについては注射のお薬に変更することで解決することもあります。治療を中断したり、忘れたりすることはよくあることです。原因がどこにあるのか検討して、できるだけ継続できるような治療をご提案いたします。