関節リウマチの症状・検査

関節リウマチはどんな病気

関節リウマチ体の免疫状態に異常が起こり、主に関節で炎症がおこって、関節痛、関節変形などがおこってくる病気です。
免疫が自己に対して病気をおこしますので、このような病気を「自己免疫疾患」といいます。長期間病気の活動性が高い状態が続くと、生活や仕事に支障が出てくることがあり、適切な治療を受ける必要があります。最近は治療薬が進歩していますので、早期発見・早期治療によって通常の生活を送られる方が増えてきています。

女性のほうが多く、発症年齢は30~50歳代が最も多くなっていますが、近年は高齢化に伴い、高齢になってから病気を発症するケースも認められています。人口の0.5から1%程度がこの病気にかかるといわれていますので、100から200人くらいに関節リウマチの方一人が出てくる、といったイメージです。自己免疫疾患の中では最も頻度の高い疾患の一つといわれています。

原因はまだよくわかっていません。感染症ではないので、人にうつることはありません。喫煙やなんらかの感染症、出産などのいくつかの環境要因と、遺伝的な要因の組み合わせといわれています。自己免疫疾患の多い家族がいることは否定しませんが、いわゆる「遺伝病」ではありませんので、家族が必ず同じ病気になるわけではありません。

症状

指痛関節リウマチの初期症状として多いものは、手指の関節痛、関節の腫れ、朝のこわばり症状です。関節リウマチ全体の90%以上の人に、手指の関節症状があります。左右対称に出てくることが多く、膝、肘、肩、足首に痛みがでてくることもあります。

手指の関節症状は第2関節と指の付け根の関節に出てきます。第1関節にはあまり出てきません。(第1関節の症状はヘバーデン結節などに代表される変形性指関節症のことが多いですが、一部、乾癬などの膠原病に第一関節障害が認められます。)関節炎の状態が強くなると、関節が腫れてきます。触れると熱感があり比較的軟らかいという特徴があります。手指の症状にどの段階で気づくかについては個人差が多いとおもいます。初めから「痛み」で気づかれる方が多い一方で、生活の支障があるといった漠然とした症状から気づかれる方もいらっしゃいます。例えば、お箸が使いにくい、テレビのリモコンが押しづらい、ハサミが使いにくい、ドアノブが回しにくい、ボタンが外しにくい、歯ブラシが使いにくい、といった生活動作です。これらの症状がすべて関節リウマチに直結するとは思いませんが、こういった不便な状態が数か月にわたって続く場合は一度、リウマチ専門医の診察をうけていただいてもいいかもしれません。

関節リウマチは背骨に症状が出ないという特徴があります。(首の骨の一番上の部分だけ例外的に障害が出ます。)腰や背中の痛みと関節リウマチの関連は低く、関節リウマチ患者様が腰痛になった場合、原因は別のことが多いです。

朝のこわばりは関節リウマチ患者様に多く認められる症状です。朝起きた後に数分こわばる人もいますし、2,3時間こわばったまま、という人もいます。ただし、朝のこわばり症状はいろいろな原因で起こることがわかってきています。

女性の場合、更年期障害であったり、甲状腺ホルモンの異常であったり、薬剤・健康食品の副作用のこともあります。最近はパソコンのキーボードの使い過ぎによる指腱鞘炎の方も多くいらっしゃいます。どのような原因で起こっているか、ご自身の判断ではわかりづらいことも多いと思います。また、関節リウマチは早期発見、早期治療が重要になっていますので、早めに医療機関に相談することは決して悪いことではありません。朝のこわばりが長期間(たとえば2,3か月)続く場合は一度リウマチ専門医の診察を受けていただくとよろしいかと思います。

関節リウマチは全身疾患と考えられていますので、関節以外にも症状がでることがあります。全身倦怠感、食欲低下、微熱、貧血などの症状を伴う患者様もいらっしゃいます。また、肺疾患、腎疾患、神経疾患、皮膚疾患、眼科的疾患などの関節以外の臓器障害を伴うような方もいらっしゃいます。関節リウマチは一見すると、関節だけに起こる病気と思われがちですが、実は、関節痛だけの病気ではなく、他の内科疾患の合併を伴うことがわかっています。私は関節だけではなく、全身の状態を把握しながら診療を行うことを心掛けています。全身の病気ですので、臓器障害が強い場合には、必要に応じて大学病院や規模の大きな病院への紹介を行い、患者様にとってベストな治療が受けられるように配慮を行って参ります。

診断

かつては1987年にアメリカリウマチ学会で作られた分類基準に沿って診断を行ってきましたが、この分類基準は早期の関節リウマチの診断に不向きであることがわかり、2010年に新しい分類基準が作られました。現在はこの新しい分類基準を参考にしながら関節リウマチの診断を行っています。

この基準は、まず、似たような疾患がないか、十分な除外診断を行うことが重要であり、その後、腫れや痛みのある関節の数、場所、期間、などが考慮されます。また血液検査やレントゲン検査、超音波エコー検査などを組み合わせて、正確に診断を行っていきます。

分類基準を満たさなくても、関節リウマチが疑わしい場合もあります。その場合は、しばらく時間をあけてから再度検査を行うこともあります。関節リウマチは早期に治療することが重要と考えられていますので、正確な診断も大事になってきます。できるだけ早期に、関節リウマチの診断をつけて、しっかりとした治療に結び付けていくことが重要です。

検査

血液検査血液の検査で重点的に調べるものは、リウマチ因子と抗CCP抗体、CRPや赤沈などの炎症反応、MMP-3などです。リウマチ因子、抗CCP抗体は関節リウマチの患者様の多くが陽性となることから診断に用いる検査として汎用されていますし、分類基準にも重要な項目に位置付けられています。

抗CCP抗体はリウマチ因子よりも診断の精度が高いとされています。また、抗体価が非常に高い患者の場合、関節破壊が急速に進行する傾向があることが知られていますので、高値の患者様の場合は十分な治療を行う必要があります。関節リウマチの患者様の10~20%はこれらの抗体や因子が陰性であるため、これらが陰性だからと言って関節リウマチを否定することはできません。その他の検査値や症状などを総合的に判断して関節リウマチの診断を付けることが重要です。
CRPや赤沈、MMP-3は関節の炎症を反映して、高値になるため、これらも診断における重要なマーカーとなりますし、治療の効果を判定する際にも重要な検査項目となります。

関節リウマチの治療を行う前に、血液検査で結核やB型肝炎などの既往などについて調べることがあります。特に生物製剤などの免疫抑制剤を使用する場合は、これらの感染症の有無について、しっかりと検査を行った後に、安全に治療を開始することが重要です。

レントゲン検査は関節リウマチの診断にとても重要です。関節周囲の骨粗しょう症、関節の隙間が狭くなっていないか、関節周囲の骨びらん(骨が溶けて、欠けたように見えること)や強直(癒合してくっついたような所見)がないか、確認します。これらの所見は関節リウマチの診断において非常に重要です。早期の関節リウマチ患者様の場合、こういった所見は全く認めず、正常の場合もあります。

また、他の病気の合併がないかについてもレントゲンでわかることがあります。また、レントゲンを定期的に施行することで骨の破壊が進行していないか、治療がうまくいっているか、判断することも可能です。関節リウマチ患者様の場合、安定していても1年に1回程度はレントゲン撮影を行うことが推奨されています。適切な時期になりましたらレントゲン検査を受けることをお勧めいたします。

関節リウマチの患者様にはしばしば「間質性肺炎」の合併を認めます。胸のレントゲンを撮って、肺に異常がないか、確認することも重要です。治療を開始する際にはかならず胸のレントゲンが必要です。もしも異常があった場合にはCT検査などを他院でお願いするケースもあります。すべては安全に治療を行うために必要な検査ですので、患者様には必要性をきちんと説明したうえで、より精密な検査をお願いしています。

近年、超音波エコー検査が関節リウマチ患者に広く行われるようになりました。超音波エコー検査はこれまでレントゲンではわかりにくかった「滑膜炎」という関節リウマチの関節炎をより鋭敏にとらえることができるようになり、関節リウマチの早期診断に役立っています。また、治療の効果判定にも使用でき、治療を強めた方がいいか、弱めた方がいいか、そういった判断が適切に行えるようになりました。

関節エコー検査は痛みを伴わず、簡便ですし、被爆の心配もありませんので、すべての患者様に安心して受けていただけます。すべての関節評価の場合はすこしお時間がかかりますが、一部の関節に限れば外来で手早く検査ができますので、関節痛が「炎症」で起きているのか、単なる使い過ぎでおきているのか、腱鞘炎が起きているのか、そういった判断の手助けとなります。当院でも関節エコーを積極的に使用して、患者様に最適な治療を提供する一助にしたいと考えております。