リウマチの方におすすめの食事・運動・日常生活

日常生活の工夫

日常生活関節リウマチの治療薬はこの20年で大変良くなってきました。これまでと比較して、寛解(=薬物治療を行いながら、病気が活動せず、安定した状態)が得られる患者様も多くなっています。寛解を目指すには、薬物療法を基本として、リハビリテーションや適度な運動、日常生活の工夫などを組み合わせたケアが大事となります。ここではいくつかのポイントをお示しますので、関節リウマチと上手に付き合っていく方法の一助にしていただければと思います。

タバコは厳禁

喫煙の心臓や血管、肺へ影響することはよく知られていますが、喫煙は関節リウマチの発症リスクを高めることが最近の研究で明らかとなっています。それだけでなく、薬の効きを悪くして、治療に影響する可能性があります。関節リウマチの患者様には肺に病気を持っているケースが多く、もしも間質性肺炎などがあれば、こういった肺の病気が悪くなり、最悪の場合、命に係わる可能性もあります。電子タバコの影響は明らかとなっておりませんが、基本的には喫煙と同じとみなされます。節煙では効果がないので、きっぱりとやめるようにしましょう。もしも自分で禁煙が難しければニコチンパッチや禁煙治療補助薬などを試すことも可能ですので、ご相談ください。

歯周病ケア

歯周病ケア最近の研究で歯周病があって口腔の細菌叢が乱れた状態が続きますと、関節リウマチの発病にかかわる可能性が指摘されています。すべての患者が当てはまるわけではありませんが、歯の状態を正常に健康に保つことは膠原病やリウマチ疾患にとって重要と考えられるようになってきました。歯の状態が悪い場合、骨粗しょう症の治療が十分に行えなかったりすることもあります。歯の健康を保つことが大事になりますので、かかりつけの歯科をもち、定期的に歯科でチェックを受けることなども重要と考えられます。

食事

関節リウマチは生活習慣病ではありませんので、基本的に食事の制限は必要ありません。もしも、高血圧や糖尿病などがあれば、それに応じた食事療法は必要になります。現時点で、関節リウマチを悪化させたり、発症に関与したりするような食事は特定されていません。関節リウマチの炎症状態が長く続く場合、体のタンパク質が低下して消耗状態となるケースがあります。良質のたんぱく質の摂取を心掛けることも重要です。

また、特に女性に多いですが、鉄欠乏性貧血を合併する患者様もいらっしゃいます。鉄の補充が必要なケースもありますが、赤身の肉やレバーなど、鉄分の豊富な食事から摂取することにも心掛けていただければと思います。

関節リウマチの患者様では、特に女性で閉経後、骨粗しょう症に悩まされるケースが多くなります。ビタミンDやカルシウムの豊富な食品をとり、適度な日光浴(これは日焼けするほど強力に浴びる必要はありません。)、適度な運動が骨を丈夫にしますので、食事と運動の両方に気を付けていただければと思います。偏食を避け、様々な食品をバランスよくとっていただく、ということになります。合併症の有無によって、食事療法は大きく異なりますので、ご不明な点があればいつでもご相談ください。

睡眠・休養を十分に取る

睡眠疲労の状態を続けることは関節リウマチの病状悪化につながります。身体の疲労、精神の疲労の両方が考えられますが、いずれにせよ、過剰な疲労は関節リウマチにはあまりよくありません。休養を十分とること、ストレスとなる原因を取り除くこと、規則正しい生活を心掛けることを心がけましょう。

ストレスを完全に取り除くことはなかなか難しいと思います。多少はストレスがあったほうが調子よい、という人もいます。一般論として、疲労は大敵ですので、疲労にならないような工夫をしてください。

関節リウマチは働き盛りの年代に多く発症します。肉体労働の男性が関節リウマチになることもあります。もしも労働の内容が調整できるのであれば、あまり肉体的な負担の少ない部署に移動してもらう、などの配慮は必要になるかと思います。以前、夜勤労働のある看護師さんが関節リウマチになったケースもありましたが、病院と相談して、日勤中心の業務に変更してもらったこともあります。安定していれば多少無理しても何とかなることもありますが、長期的に見ると、夜勤労働や不規則な労働は関節リウマチの患者様にはやや不向きと言わざるを得ません。

仕事が生きがいになっている人には難しい問題になることもありますが、ご自身にとってどの程度の身体的、精神的ストレスになっているかをよく考えて、ベストな働き方を考えることが重要と思われます。

体を動かして関節や筋肉の機能を保つ

炎症や関節の腫れ、痛みが強い時は、無理に動かさずに安静にすることが大事です。関節リウマチを発症して、薬剤を処方され、なかなか薬が効かないこともあります。2,3か月たって少しずつ症状が落ち着く患者様もいらっしゃいます。病状が落ち着いてきて、痛みが少なくなり、腫れもおさまってきたら自分ができる範囲で、毎日少しずつリハビリテーションや軽い運動をはじめてみましょう。

1か月休ませていれば、個人差はありますが、その2倍、2か月程度かけて筋力を戻していくイメージです。安静にすると驚くべきスピードで筋力は低下します。「フレイル」という言葉をどこかで聞いたことがあるかもしれません。主に高齢者が、筋力低下などによって身体活動性が低下し、日常生活で支障をきたし、施設入所や寝たきりとなってしまう状態をいいます。関節リウマチは「フレイル」状態になる悪化要因の一つ、と言われています。高齢者の関節リウマチ患者様にとって筋力低下は非常に重要な問題となります。年齢や個人差はありますが、トレーニングを開始すれば少しずつ、筋力は戻ってきます。80歳を超えた高齢の方でも、トレーニングの効果はあります。何歳になってもあきらめないことが大事です。諦めれば、あっという間に筋力を失います。コツコツと、リハビリに取り組むことが重要です。自宅でも簡単にできるリウマチ体操や、炎症が強い時は関節を動かさずにできる体操がありますので、体調と相談しながら無理せず行いましょう。

関節リウマチの患者で特に重要なのが大腿四頭筋という、太ももの一番太い筋肉です。膝の関節炎が強くなると、膝を安静に保つため、この大事な筋肉がやせてしまいます。関節リウマチの初発の方で、最初に診察した時に、太ももが異常に痩せてしまい、歩くのもフラフラという方がいらっしゃいます。私の仕事は薬を使って膝の関節炎をできるだけ早く抑えてあげることになりますが、太ももの筋肉をつけるのは薬剤だけではうまくいかず、患者様ご自身のリハビリの協力が必要です。膝の痛みや腫れが落ち着いてきたらゆっくりとスクワット運動を始めてみましょう。立って行うスクワットが大変であれば、横になったままできる太もものトレーニングもあります。

もしも不安でしたらご相談ください。もともと変形性膝関節症のある方、体重が重い方、膝や足首の関節痛が強い方は歩行よりもジムでの自転車こぎ(エアロバイク)やプール運動のほうがいいとされます。

また、ご自身でリハビリが大変な場合は、リハビリ科を行っている近隣の医療施設にお願いするケースもあります。いずれにしても適切に筋力をつけることはリウマチ治療の重要な要素の一つですので、筋力向上を意識した生活を送っていただければと思います。

関節に負担をかけない自助具・装具利用や、洋式の生活で暮らしやすく

自助具持ちやすい食器や、装具を利用することで関節への負担を和らげる方法があります。リハビリ科の先生にお願いすることになりますが、装具をオーダーメイドで作ってもらう事も可能です。

また、足の指変形が強い場合、なかなかフィットした靴がみつからず苦労するケースもあります。大きめのシューズで対応することもありますが、限界がある場合は、医療用のオーダーメイド靴を作成することもあります。かつてはデザイン的に難ありのオーダー靴もありましたが、最近はデザインも良くなってきましたので靴で悩んでいる場合は一度ご相談いただければと思います。医療保険が効く靴もあります。

着替え、入浴、食事、排せつなどの基本的な生活動作は健康な人にとっては問題なくても、関節リウマチ患者にとっては大変な作業になることがあります。一般論として、和式の生活様式よりも洋式の生活の方が関節への負担が軽くて済みます。畳よりも、椅子に座ったほうが膝や股関節の負担を減らすことができます。ベッドのほうが起き上がり動作の負担が少なくなります。正座の姿勢は美しいと思いますし、日本的な美意識にかかわる部分だと思いますが、関節リウマチ患者にとっては苦痛以外の何物でもありません。正座にならずに済む方法を考えるべきです。

近年はパソコンのキーボードやスマートフォンの使い過ぎによる指の腱鞘炎、肩こり、首痛症状などが問題になっています。これらは便利ですが、長時間同一の体の向きや姿勢で作業することで、引き起こされる症状ともいえます。適度な休憩時間を取ることや体操、ストレッチを取り入れることも重要です。